TAKAHASHI KYOTA

二十四節気の色目 -京都の四季の色彩を映し出す光-

古く平安の人々が、京都の四季の移ろいを絹衣の色を組み合わせて表現した「襲の色目」や「節供の慣習」に見られる色彩を、二十四節気ごとの演出プログラムとして反映します。現代にも通じる季節の色の理解、配色の感性を用いて、岡崎の自然の移ろいとともに季節の景観になじむ光を作ります。

立春  /  2月上旬~

紅梅の襲

紅梅 x 蘇芳

旧暦の新年の頃にあたる立春。この頃になれば、京の町中では梅が一輪匂い始めます。
迎春の喜びを紅梅の襲色目に込めて。

雨水  /  2月下旬~

柳の襲

しろ x 薄青

雨水とは、雪氷とけて雨水となる頃を迎え少しづつ春を感じさせる時期です。猫柳の枝に芽生えた白いうぶ毛と葉の色を配する柳の襲色は、早春を感じさせます。

啓蟄  /  3月上旬~

萌黄の襲

萌黄 x 青

冬ごもりをしていた虫たちが地上にでてくる頃となり本格的な春までもう一息。早春に芽を出した若草が萌えいずる姿を表した萌黄の襲色目。古くより若者を象徴する色目ゆえ、新たな門出へのエールを込めて。

春分  /  3月下旬~

桜の襲

しろ x 赤花

昼と夜が同じ長さになる春分の時期は二十四節気の大きな節目のひとつ。古来、人は桜を愛で、数々の歌を読んできました。それは桜の襲色目が実に多いことからもうかがえます。中でも最も象徴的な色目を選びました。

清明  /  4月上旬~

山吹の襲

青 x 黄

清浄明潔の略と言われる清明は、全てのものが清らかに生き生きとする頃。桜のあとに咲く山吹は、目の覚めるような黄金色で春から夏への移ろいを導きます。数ある山吹の襲より青い葉の間から山吹の花が覗く情景を配色した青山吹の襲を選びました。

穀雨  /  4月下旬~

藤の襲

薄色 x 萌黄

春の雨は、農作物にとって恵みの雨です。穀雨は種まきの目安とされて来ました。四月も半ばを過ぎて、おおかたの桜が散り、山吹、躑躅(つつじ)が咲き誇ったあと、藤の花に主役がやってきます。

立夏  /  5月上旬~

卯の花の襲

しろ x 青

気持ちのよい五月晴れがあり、次第に夏めいてくる季節。暦の上での夏の始まりに「卯の花」の襲を選びました。野原や岸辺で小さな白い花をいっぱいにつける卯の花は、目立たない花ですが、昔の人はこの花が咲くことで初夏の訪れを知りました。

小満  /  5月下旬~

菖蒲の襲 (二藍 x 萌黄)

小満とは、いのちが次第に満ち満ちてくるころのこと。旧暦の「端午の節句」に邪気を払う習わしにちなんで、菖蒲の襲を。諸説ある中でも、実際の花と葉の色に近しい二藍と萌黄の色合いを選びました。

芒種  /  6月上旬~

若苗の襲

淡木賊 x 淡青

芒種のころは昔から田植えの時期とされてきました。
田植えの時期にちなみ「若苗」のかさねを。

夏至  /  6月下旬~

水色の襲

浅縹の濃淡

夏に至と書いて夏至。
一年でもっとも昼が長くなり夏至からは日に日に暑さを増して行きます。
京都の蒸し暑い夏に一服の清涼感を「水色」にこめて。

小暑  /  7月上旬~

二藍の襲

藍 x 紅

小暑には梅雨が明けて本格的に夏になります。二藍の襲は通年の色目ですが、平安貴族男子の夏の日常着である直衣(のうし)が二藍であったとされることから。
色目によって少しでも暑さを和らげる宮中の人々に思いを寄せて。

大暑  /  7月下旬~

撫子の襲

紅 x 淡紫

一年のうちでもっとも暑いころ。夏から初秋にかけて長く咲き続ける撫子の花は、「常夏」の古名を持ちます。
「常夏」は季語では夏にとらえられることからこの時期の襲に選びました。

立秋  /  8月上旬~

女郎花の襲

経青緯黄 x 青

立秋とは初めて秋の気配がほの見えるころ。暑い盛りですが、これ以降は夏の名残の残暑です。夏の終わりを告げるがごとくに咲く女郎花は秋の七草のひとつです。

処暑  /  8月下旬~

萩の襲

紫 x しろ

処暑の頃になると少し暑さもやわらいできます。草かんむりに「秋」と書くことからも「萩」は日本人にとって格別強く秋の風情を感じさせる花で、万葉集にも多く詠われています。

白露  /  9月上旬~

桔梗の襲

二藍 x 濃青

白露とは、大気が冷えて来て露を結ぶ頃のこと。秋の七草の桔梗の襲が、本格的な秋の訪れを感じさせます。

秋分  /  9月下旬~

菊の襲

しろ x 黄 x 青

秋分は、春分と同じく昼夜の長さが同じになる日。ここから次第に日が短くなります。旧暦の九月にあたるこの頃は別名「菊月」と呼ばれるほど、菊の花が咲き乱れます。また、旧暦の九月九日は重陽の節句、別名「菊の節句」と呼ばれます。

寒露  /  10月上旬~

青紅葉の襲

青 x 蘇芳

露が冷たく感じられてくるころ。空気が澄み、夜空にさえざえと月が明らむ季節です。秋になり漸く色づきかけてきた木々の葉の色を象った色目である青紅葉の襲を選びました。

霜降  /  10月下旬~

紅葉の襲

黄 x 蘇芳

朝夕にぐっと冷え込み、霜が降りるころ。東山も晩秋になり赤く色づきます。黄葉の黄と紅葉の赤、いかにも秋らしい紅葉の襲です。

立秋  /  11月上旬~

移菊の襲

紫 x 黄色

冬の気配が山にも里にも感じられてくるころ。冬に近づき、白菊が雪や霜にあって花の周囲から段々と紫色に変化しているところを表した色目が移菊の襲です。平安人の繊細な色彩感覚と美意識が伺われます。

小雪  /  11月下旬~

枯野の襲

淡香 x 青

寒さが進みそろそろ雪が降り始めるころ。「枯野」とは草の枯れてしまった冬の色無き野原を象った色目です。

大雪  /  12月上旬~

氷重の襲

しろ x 鳥の子

いよいよ本格的に雪が降り出すころのこと。氷のイメージを写そうと意図された襲色目です。鳥ノ子紙のわずかに黄味を含んだ灰色勝ちの白と、純白という同じ白色系の微妙な色味で表現しています。

冬至  /  12月下旬~

黄金の濃淡

一年で最も昼が短く夜が長いころ。錦は金糸などで模様を織り出した錦織りを光の濃淡で表現した色目。古代の襲色目にはありませんが、クリスマスや大晦日など現在の年の瀬を迎える色目として。

小寒  /  1月上旬~

松竹梅の襲

青 x 紅梅 x しろ

小寒は寒さが極まるやや手前のころ。彩りの無い厳しい冬に、常磐の緑の松、風雪に耐えまっすぐに伸びる竹、雪が積もる寒気に花咲く梅。寒の時の友として「歳寒三友」と呼ばれる松竹梅を新暦の新年の祝いに相応しい色目として選びました。

大寒  /  1月下旬~

雪の下の襲

しろ x 紅梅

一年で最も寒さが厳しいころ。日が次第に長くなり、春へ向かう時期でもあります。
雪に埋もれた早咲きの紅梅の花を表した色目で、遠からぬ春を知らせます。

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